eπi+1=0、愛の数式。

ケロンパ

2006年01月25日 23:28

小川洋子原作の映画『博士の愛した数式』を観にゆきました。
小川洋子さんの書く静謐で濃密で奇妙な世界がだいすきなのですが、映画化となるとどうなのかしら? 原作の完成度が高いだけに、どきどき、そしてわくわーく。
始まってみると、なかなかの的役キャスティングが次々登場。
  家政婦・杏子深津絵里
  博士寺尾聰
  √ (ルート)吉岡秀隆
  義姉浅岡ルリ子
絶妙です。


事故のせいで記憶が80分しか持たない天才数学者の博士と、彼の身の周りの世話をすることになった家政婦・杏子とその息子・ルートの驚きとよろこびの日々。
博士と会う度に自己紹介をしなくてはならないのですが、有能な家政婦である杏子と爛漫なルートは阪神タイガース、江夏豊、そして潔い数字や控えめな数式をキーワードに、博士との時間をかけがえの無いものに作りあげてゆきます。
原作でもそうでしたが、数学への愛を語る博士の言葉のうつくしいこと。 
それはとても豊かで、深い慈愛に満ちています。 
博士が数式を解説する時、なにかうつくしい芸術品や天体について語っているようです。
数字がこんなにもロマンティックなものだなんて、知りませんでした。
そんな博士から教えを授かり、自身も数学の道を志すこととなるルート
彼もまた博士同様に知識だけでなく、想いを伝えることを大切にする、すてきな数学者、魅力的な大人になります。
高校生と思われる生徒を前にして「大切なのは、ここ(こころ)でみること。」
おお、こんな教えを説く数学教師がいるならば、是非とも教わりたい! 
苦手な数学に対するイメージが180度すっかりと変わってしまいました。
こんな先生に会いたかったな、中高生の頃にー。


主要3人は勿論のこと、いつも悲しみをたたえたえ3人を見守る(見張る?)謎の未亡人、謎めいた義姉役のルリ子が素晴らしいのです。
見ていて痛々しいほどの彼女のストイックな愛し方は、博士の変わらない愛情で少しずつ、少しずつ変わってゆきます。
博士が彼女に捧げたオイラーの公式は「記憶は不完全でも、愛は決して変わらないよ。」と言っているようでした。


最後に添えられたウィリアム・ブレイクの詩がまたすてきでした。
原作、映画、ともに素晴らしい作品です。

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